ティリンデッリ P.A. 「けがれない」・ガスタルドン S. 「禁じられた歌」

ピエール・アドルフォ・ティリンデッリ（1858-1937）作曲の、＜けがれない＞は、歌とピアノの為に書かれましたが、後にヴァイオリンパートを加筆し更に優美な歌曲になりました。　百合の花のように美しい女性がゴシック教会の聖堂の中で見初められ結婚するまでの物語を、バラード風に歌います。

＜けがれない＞

彼女は、愛していた、
ゴシックの孤独な聖堂を、
祭壇の上の消え行くロウソクを、
ロザリオの祈りをつぶやく声を。

彼女は、祈っていた、
まだ知らぬ苦しみのために。
百合のように彼女は美しく、
自身はそれを知らなかった。
人の世の者ではなく、
天界の者と思われた・・・
彼女は、いつも祈っていた・・・
ある夜、聖堂のアーチの陰から
ひとつの眼差しが彼女を包んだ。
彼女は頭をたれ、振り向かず、
ただ、全身の震えが彼女を捕らえた。

別の夜もまた、静かな聖堂で
あの面影に出会い、彼女は
地獄と天国を誓い(生涯を誓い)、
心は激しく打ち、征服された・・・

そして、そのくちびるに上る
ひとつの声は“私は貴女を愛します”と彼女に言い　彼女は泣いた・・・

天使が、天から彼女に心を寄せ、
祭壇上の、ランプがひとつ壊れた・・・

トリノ出身（!!）の、スタニスラオ・ガスタルドン（1861-1939）作曲の、この有名な歌曲＜禁じられた歌＞は、イタリア人なら誰でも知っています。　“くちづけしたい・・・”からのサビの部分は、日本のＣＭでも使われたこともあり、きっと一度は耳にしたことがあるでしょう。

＜禁じられた歌＞

毎夜、私のバルコニーの下で
愛の歌が歌われるのを聴く
ステキな彼が何度も繰り返すたびに
私の心は強く鼓動する。

おお、なんと甘いのだろう
あのメロディーは、
おお、なんと美しいのだろう
どんなに私をとらえたことか。

その歌を、私が歌うことを、
ママは望まない。
私は知りたい、どうして禁じるのか
ママが居ないと、歌いたくなる
私を虜にした、あのメロディーを。

“くちづけしたい、君の黒髪に、
君の唇に、君の気高いひとみに、
私は死にたい、君と、神の天使よ、
おお、美しく愛された人よ、
私の宝よ!!”

昨日、彼はやって来て、
いつもの歌を聴かせてくれた。
“くちづけしたい、君の黒髪に、
君の唇に、君の気高いひとみに、
抱きしめておくれ、いとしい人
抱きしめておくれ、君の心に
味わわせておくれ、愛の陶酔を!!